TMS短期集中入院

TMS短期集中入院(R5.8.1現在休止中)

脳卒中による上肢の麻痺に対する最先端医療を山梨県内で初めて導入いたしました。

当院では、在宅生活のリハビリテーションだけでは回復が難しくなった、脳卒中による腕や手の麻痺の改善を目的とした、TMS短期集中入院rTMS治療:反復性経頭蓋磁気刺激治療+ボツリヌス療法+集中的作業療法+自主トレーニング:14日間を行なっています。わたしたちは、最先端医療を導入することで、人間の脳の潜在能力と可能性を追求していきます

rTMS治療(反復性経頭蓋磁気刺激治療)

rTMS(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation)治療とは、磁気を発生させる機械(磁気刺激装置)を用いて、頭の外側から大脳局所を連続的に磁気刺激する治療法です。これは、すでに障がいを受けた部位の機能を再開させるものではなく、健常な大脳組織を刺激して、機能代償が活発に起きるようにする治療であり、脳の持つ回復力を最大限に引き出すことを目的としています。
治療には、安静にしている状態で約20~30分間かかりますが、磁気のみを使用するため痛みや苦痛を伴うことはありません。

<磁気刺激装置 マグプロ システム R30>

 

<rTMS治療>

ボツリヌス療法

脳卒中の後遺症として、手足の麻痺と一緒に筋肉がつっぱる症状である痙縮(けいしゅく)が多く見られます。痙縮では、わずかな刺激で筋肉に異常な力がはいり、「手指が握ったままになり開かない」「肘や足先が曲がってしまう」などの症状が見られ、眠れないことや痛みの原因になります。また、長く続くことで関節が拘縮し、日常生活に大きく支障をきたします。

この痙縮を改善する新たな治療法として、ボツリヌス療法が2010年10月に認可されました。ボツリヌス療法は、ボツリヌス菌の作り出す天然蛋白質(ボツリヌストキシン)を成分とする薬「ボトックス」を筋肉に注射する治療法です。作用は局所性で、2~3日で効果が現れ、1~2週間で安定し、3~4ケ月程度持続します。副作用として、一時的に脱力などが生じることがあります。

ボツリヌス療法は、脳卒中合同ガイドライン委員会(日本脳卒中学会・日本脳神経外科学会・日本神経学会・日本神経治療学会・日本リハビリテーション医学会・厚生労働省)により策定された2015年の脳卒中ガイドラインにおいて、「痙縮による関節可動域制限」に対し、グレードA(行うよう強く勧められる)で使用が推奨されています。

ボツリヌス療法の実施については、医師の診察により判断いたします。

ボツリヌス療法は保険適応の治療ですが、比較的高額であるため、事前に充分な説明を受けた後に納得されてから治療されることをお勧めします。

集中的作業療法・自主とレーニング

障がいされた大脳の神経活動がrTMS治療により活性化され、リハビリテーションに対する反応性は極めて高くなります。そこで、大脳の持つ機能代償能力(障がいされた機能を補う能力)を最大限に発揮させるために集中的に作業療法を行い、麻痺した腕や手の機能改善を目指します。

TMS短期集中入院のスケジュール

 

1日目:入院日 入院日 2~13日目(日曜・祭日を除く) 14日目:退院日
午 前 入院・診察・検査 rTMS治療+集中的作業療法
(約60分)
退院時上肢機能評価
自主トレーニング
(約60分)
診 察
午 後 入院時上肢機能評価 rTMS治療+集中的作業療法
(約60分)
退 院
ボツリヌス療法 自主トレーニング
(約60分)

TMS短期集中入院の適応基準

現在のところ、脳卒中後の上肢麻痺すべての方に適応がある(適応がある=効果が期待できる=実際に治療を受ける)わけではありません。

  1. 年齢が16歳以上である。
  2. 認知機能に問題がない。
  3. うつ病でない。
  4. 透析をしていない。
  5. 頭蓋内に金属(クリップ※1など)が入っていない。心臓ペースメーカーが入っていない。
  6. 少なくとも1年間は痙攣の既往がない(脳波検査で異常がない)。
  7. 全身状態が良好である(発熱・栄養障害・重度心疾患・体力低下などがない)。
  8. 日常生活が自立している(自ら移動できるなど生活上では介助がいらない)。
  9. 脳卒中(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)を原因とした上肢麻痺※2を呈している。

チタン製、ステンレス製など非磁性体も含む。

手首を曲げないで、指でグーパーができる。
少なくとも母指・示指・中指の3指が曲げ伸ばしできる。

TMS短期集中入院の手続き

当院におけるTMS短期集中入院を希望される方は、上記の適応基準をすべて満たしているかどうかをご確認のうえ、以下の手順に沿って手続きをお願いいたします。

  1. 当院に電話でお問い合わせいただき、外来受診日(天野達也医師:月曜日午後)を予約してください。
  2. 現在のかかりつけの医療機関に相談し、入院申込書および紹介医意見書の準備をお願いいたします。
  3. 当院外来にて診察をうけていただきます。

その際に、①入院申込書 ②紹介医意見書 ③保険証 ④現在服用されているお薬をご持参ください。受診の結果、医師が適応と判断した場合に入院日(月曜日)を検討させていただきます。入院日の決定につきましては、後日電話でご連絡いたします。

※ その他の詳細につきましては、TMS短期集中入院のご案内をご覧ください。

よくあるご質問

Q1 rTMS治療は、麻痺している足にも効果はありますか?
残念ながら、腕や手ほど足の麻痺には効果がありません。その理由は、腕や手を動かす脳の部分は脳の表面にあるのに対して、足の運動をつかさどる部分が脳の奥にあり、磁気の刺激が十分に届かないからです。当院では、上肢(腕・手)の麻痺を対象として治療を行っています。

Q2 発症からかなりの年数が経つのですが、rTMS治療の効果はありますか?
適応基準を満たしていれば十分に効果は期待できますが、実際に診察を受けての医師の判断によります。

Q3 発症後1年以内ですが、TMS短期集中入院の適応となりますか?
いいえ。
原則として発症後1年以上経過している方が対象となります。
また、痙攣発作の既往がある方は、医師の指示により精査が必要な場合があります。

Q4 TMS短期集中入院の治療には、健康保険が使えますか?
はい。
健康保険を使用し、治療費(入院料・検査料・リハビリテーション料の一部・ボツリヌス療法)を請求させていただきます。但し、保険適応外のリハビリ料、食事負担金、個室料が別途必要となります。

Q5 TMS短期集中入院の治療費は、いくらくらいかかりますか?
保険の種別、各種受給者等の有無により、個々に負担金が異なります。
詳しくは、入院係にお問い合わせください。

Q6 ボツリヌス療法で、痙縮はどの程度治りますか?
ボツリヌス療法により、痙縮そのものが完治するわけではありません。しかし、治療によって痙縮が改善し、日常生活活動やリハビリテーションを行いやすくなることが期待できます。

Q7 ボツリヌス療法は、ずっと続けたほうがよいのでしょうか?
ボツリヌス療法の効果が期待できる期間は、通常3~4ヵ月間です。
その後は徐々に効果が消えていきますので、再度ボツリヌス療法を受けることをおすすめします。但し、治療間隔は症状によって異なりますので、医師とご相談ください。

Q8 ボツリヌス療法を受けたあと、リハビリテーションはお休みしたほうがよいですか?
ボツリヌス療法によって痙縮が改善しても、リハビリテーションを行わなければ機能の回復は望めません。ボツリヌス療法は、リハビリテーションと一緒に行うことによって、日常生活への効果が期待できます。したがって、リハビリテーションはこれまで通り継続してください。

Q9 ボツリヌス療法を受けたあとの注意点はありますか?
当日は、注射部位をもむことや、激しい運動などは控えてください。
翌日以降は、特に日常生活上の注意点はありません。

Q10 外来でボツリヌス療法のみを受けることは可能ですか?
いいえ。
ボツリヌス療法は、TMS短期集中入院の一環として行なっております。外来でのボツリヌス療法は実施しておりません。

お問い合わせ

TMS短期集中入院に関するご質問・ご相談などお気軽にお問い合わせください。
石和温泉病院 作業療法室 担当:古屋(ふるや)
TEL 055-263-0111(代)/ FAX 055-263-0260